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「・・・・なあ、ココ暑くない?」
「だったら教室にいればいいだろ」
「俺だけぬっけなんて嫌だよ!」
「じゃあ黙ってろ」
ぴしゃりといい放った真人の一言に、悟は盛大なため気を吐いて硬いコンクリートに寝そべった。
昼休みの屋上。
今日は今年に入って一番の暑さらしい。
そんな日になぜ屋上、と思わなくもないが、人口密度の高い教室の蒸し風呂状態に比べれば、まだマシなほうだと思う。
真上にある太陽の日差しは強いけれど、頬に当たる風は心地よい。
教室の濃縮された空気に嫌気がさした真人が、智紘を引っ張って屋上にきたのが10分ほど前。
その数分後には、ふたりを探して祐一郎と悟が弁当片手に屋上にやってきた。
屋上の暑さに散々文句をいっていた悟は、それでも弁当を軽く平らげ、その口からはいまや微かな寝息が聞こえる。
「達也さん帰ってきてるんだっけ?」
思い出したかのように祐一郎が口を開く。
パンを頬張りながら頷くと、祐一郎は「そっか」と微笑んだ。
「じゃあ春子さんご機嫌だな」
「まぁね。見てられないくらい」
「イチャイチャ?」
「そりゃもう・・・・」
ここ最近の様子を思い出しながら肩を竦めると、祐一郎は声を上げて笑った。
つきあいの長い祐一郎は智紘の両親とも面識がある。
何度か顔をあわせた程度ではあるが、彼らのラブラブぶりは充分把握済みらしい。
「いいよな、智紘の両親。なかよくってさ」
「そうかな?」
「うらやましいよ、春子さんは美人だし。会ったことある?真人」
「ああ、一度」
「美人だろー?」
「そうだな」
智紘に視線を向けて真人はゆっくりと微笑んだ。
その顔におもわず眩暈を覚えた。
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