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「どうした? 大丈夫? 」
聞き覚えのある声。
この声はみーちゃんだ。
顔をあげると、心配そうに聞くみーちゃんがいた。
時間が戻ったんだ。
あの日と同じ場所。
あの日と同じセリフ。
「ごめん、大丈夫! ちょっと靴紐がほどけちゃった。 ありがとう! 」
私はあの日を再現することにした。
あの日と同じように実際にほどけている靴紐を結ぶ。
「おっけ! よし、じゃあ第二ラウンドといくよ! 捕まえてみなっ! 」
あの日と同じように、笑いながら後ろを振り向いて走るみーちゃん。
滅多に車が通らない横断歩道。
彼女に迫る車。
運転手は慌ててブレーキを踏んだ。
『車は急には止まれない』
あの日と同じように全てスローモーションのように映る。
これは全てあの日の再現。
唯一違うところは、あの日はみーちゃんを助けて私が犠牲になった。
今日は私が見捨ててみーちゃんが犠牲になる。
ゴトンッ、と手に持っていたスクバが落ちる。
いくら憎んでいた相手だからといって、轢かれるところを見たいと思うほど、歪んではいない。
私は思わず目を閉じた。
その瞬間、走馬灯のようにたくさんのみーちゃんとの思い出が頭を過った。
みーちゃんとの出会い。
中学校の修学旅行。
高校受験に向けて。
お昼ご飯。
電信柱鬼ごっこ、などなど。
そしてその思い出はどれも、みーちゃんの最高の笑顔があった。
やっぱり見捨てることなんて、私には出来なかった。
彼女の服を思いっきり引っ張った。
その反動で私が前に出る。
車が近づいてくる。
「みーちゃん。 ありがとう、そしてバイバイ。 大好きだよ」
キキーッ!!
ドンッ!!!
その後、私が目覚めることは二度と無かった。
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