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「珍しいものがいるねぇ。人の子と家の付喪神だ。」
見上げた先、柿の木の枝には、柿色の修験装束を来たカラスがいる。
「柿の木の精霊だな。」
悠真が言う。
「なぁ、この辺で最近ばぁさんが転んだやろ。その時、なんか忘れて行かんかったか?」
コマが木の上に向かって叫ぶ。
この辺りはお寺や雑木林が多く残っており、日の暮れかけた今の時間帯は人通りが少ない。
「ふむ。そこの溝を何かが行き来していたがな。」
コマはそれを聞くと、坂の脇にある溝に沿って歩きだした。
「ありがとう!」
悠真は礼を言うと、コマとは反対側を探しはじめた。
「おったぞ!」
しばらくして、坂の上の方からコマが呼ぶ。
「どこだ?」
「この溝蓋の下や。」
悠真はコマの隣にしゃがみこみ、蓋の下を覗きこんだ。
「?寝てる?」
嫌な予感が頭をよぎる。
「手遅れなんか?」
コマの言葉に緊張しながら、悠真は手を伸ばした。
その時である。
覗いていた逆から、何かが飛び出した。
「動けるんやったら、さっさと出てこんかい。」
それを見たコマが、呆れたように言う。
「おヌシは阿呆か?主が折れ櫛拾おうとしておるんじゃぞ!止めんかい!」
甲高い声でそう叫んだのは、おかっぱ頭に桃色の浴衣姿の小さな女の子だった。
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