つくも

16/21
前へ
/21ページ
次へ
「珍しいものがいるねぇ。人の子と家の付喪神だ。」 見上げた先、柿の木の枝には、柿色の修験装束を来たカラスがいる。 「柿の木の精霊だな。」 悠真が言う。 「なぁ、この辺で最近ばぁさんが転んだやろ。その時、なんか忘れて行かんかったか?」 コマが木の上に向かって叫ぶ。 この辺りはお寺や雑木林が多く残っており、日の暮れかけた今の時間帯は人通りが少ない。 「ふむ。そこの溝を何かが行き来していたがな。」 コマはそれを聞くと、坂の脇にある溝に沿って歩きだした。 「ありがとう!」 悠真は礼を言うと、コマとは反対側を探しはじめた。 「おったぞ!」 しばらくして、坂の上の方からコマが呼ぶ。 「どこだ?」 「この溝蓋の下や。」 悠真はコマの隣にしゃがみこみ、蓋の下を覗きこんだ。 「?寝てる?」 嫌な予感が頭をよぎる。 「手遅れなんか?」 コマの言葉に緊張しながら、悠真は手を伸ばした。 その時である。 覗いていた逆から、何かが飛び出した。 「動けるんやったら、さっさと出てこんかい。」 それを見たコマが、呆れたように言う。 「おヌシは阿呆か?主が折れ櫛拾おうとしておるんじゃぞ!止めんかい!」 甲高い声でそう叫んだのは、おかっぱ頭に桃色の浴衣姿の小さな女の子だった。
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

24人が本棚に入れています
本棚に追加