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「そうだ、小梅さん。櫛なんだけど、どこで折れたか覚えてますか?」
コマの普段はまず聞かない鳴き方に笑いを堪えつつ、丁寧に悠真が切り出す。
「あぁ、正ちゃんにお願いした櫛かい?」
小さな咳を1つしてから、小梅さんが訊く。
「うん。祖父が預かったままでごめんなさい。大事なものですよね。」
申し訳なさそうに、しおらしく振る舞う悠真に、今度はコマが笑いを堪えている。
おじいちゃん子の悠真は、目上に礼儀正しい。
ただ、しおらしい性格ではない。
「そうなの。でも、もういいわ。悠真ちゃんにまで何かあったら正ちゃんに顔向けできないもの。」
「小梅さん、祖父が櫛のせいで体調崩したと思ってるんですか?」
小梅さんは答えず、すまなそうな顔をする。
「それはないよ。そんなヤワな人じゃないです。」
悠真は力強く言った。
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