つくも

13/21
前へ
/21ページ
次へ
「そうだ、小梅さん。櫛なんだけど、どこで折れたか覚えてますか?」 コマの普段はまず聞かない鳴き方に笑いを堪えつつ、丁寧に悠真が切り出す。 「あぁ、正ちゃんにお願いした櫛かい?」 小さな咳を1つしてから、小梅さんが訊く。 「うん。祖父が預かったままでごめんなさい。大事なものですよね。」 申し訳なさそうに、しおらしく振る舞う悠真に、今度はコマが笑いを堪えている。 おじいちゃん子の悠真は、目上に礼儀正しい。 ただ、しおらしい性格ではない。 「そうなの。でも、もういいわ。悠真ちゃんにまで何かあったら正ちゃんに顔向けできないもの。」 「小梅さん、祖父が櫛のせいで体調崩したと思ってるんですか?」 小梅さんは答えず、すまなそうな顔をする。 「それはないよ。そんなヤワな人じゃないです。」 悠真は力強く言った。
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

24人が本棚に入れています
本棚に追加