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天文坂は、一駅ほど歩いたところにある。
駅から天文台までを結ぶ坂道の名前だ。
コマがいるので電車に乗るわけにはいかず、大した距離でもないので一駅分を歩く。
駅が近くなってきたあたりで、少し離れた場所に総合病院の大きな建物が見えた。
「小梅さんの通っている病院ってあそこだな。」
夕暮れの街を歩きながら、悠真が言う。
「そんなんえーから。はよせな日が暮れるで。」
急ぎ足ながらも、たわいない話を交わす。
程なくして、天文坂についた。
小梅さんの言った通り、その坂の中腹に大きな柿の木がある。
その木はたわわに実をつけ、確かに目をひいた。
「この辺やな。」
コマは木の辺りまで駆けて行き、辺りを見回す。
すると、ふと何かに気づいたように上を見上げた。
「上?」
コマの隣に追い付くと、悠真も柿の木を見上げた。
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