つくも

17/21
前へ
/21ページ
次へ
「ややこしいな。折れ櫛は付喪神も拾たらあかんのか。」 コマが櫛の付喪神に詰め寄る。 「櫛はな!昔から苦、死と音が同じじゃから、他人の櫛を拾うたら、災いを貰うと言われておるんじゃ。そんなことも知らんのか!」 騒ぐ櫛の話を聞きながら、悠真はコマの首から紅い巾着をはずすと、口を開けてコマに中身を出すように頼む。 コマは朱い袱紗を取り出すと、櫛の付喪神の前に置いた。 「これ、小梅の袱紗じゃ。」 櫛は静かになる。 悠真は袱紗を開けてやる。 「早く本体に戻ってくれ。小梅さんのところに帰ろう。」 「自力では戻れん。折れてしもて力が出んのじゃ。 」 悠真はそれを聞くと、買ってきたミネラルウォーターを取り出す。 「これで何とかなるか?」 「なんと!はよそれをかけてくれ!」 悠真はペットボトルのフタを開けると、櫛の付喪神にかけてやる。 「ダメだな。」 1本目では戻る気配がなく、2本目、3本目とかけるが、さっぱり手応えが無かった。 「踏んでくれ。」 櫛の付喪神が下を向いたまま言う。 「いや、それは…。」 女の子の姿をしているだけに、余計に踏みにくい。 「よっしゃ、任せとけ。」 悠真とはうってかわって、コマが張り切って櫛の付喪神を踏みつけた。
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

24人が本棚に入れています
本棚に追加