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「ややこしいな。折れ櫛は付喪神も拾たらあかんのか。」
コマが櫛の付喪神に詰め寄る。
「櫛はな!昔から苦、死と音が同じじゃから、他人の櫛を拾うたら、災いを貰うと言われておるんじゃ。そんなことも知らんのか!」
騒ぐ櫛の話を聞きながら、悠真はコマの首から紅い巾着をはずすと、口を開けてコマに中身を出すように頼む。
コマは朱い袱紗を取り出すと、櫛の付喪神の前に置いた。
「これ、小梅の袱紗じゃ。」
櫛は静かになる。
悠真は袱紗を開けてやる。
「早く本体に戻ってくれ。小梅さんのところに帰ろう。」
「自力では戻れん。折れてしもて力が出んのじゃ。
」
悠真はそれを聞くと、買ってきたミネラルウォーターを取り出す。
「これで何とかなるか?」
「なんと!はよそれをかけてくれ!」
悠真はペットボトルのフタを開けると、櫛の付喪神にかけてやる。
「ダメだな。」
1本目では戻る気配がなく、2本目、3本目とかけるが、さっぱり手応えが無かった。
「踏んでくれ。」
櫛の付喪神が下を向いたまま言う。
「いや、それは…。」
女の子の姿をしているだけに、余計に踏みにくい。
「よっしゃ、任せとけ。」
悠真とはうってかわって、コマが張り切って櫛の付喪神を踏みつけた。
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