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器物は百年経つと、精霊を宿し付喪神になるという。
器物に限らず、人でも草木でも動物でも、長い年月の中で不思議な力を得たりする昔話は、この国には意外と多い。
その昔話が本当かどうかは分からないが、少なくともこの家には”曰く付き”な物がたくさんある。
まず、この茶碗に付属した茶人風の小人のような老人。
それから、関西弁をしゃべる狐のような白い犬。
本人の自己申告ではあるが、両名、付喪神だという。
ただ、先程からその2名と会話をしている少年は、とりあえず人である。
五百蔵 悠真(いおろい はるま)。
付喪神が見える、ちょっと変わった体質の高校生だ。
「まったく。神様を箱に仕舞うやつがあるか!」
茶碗から這い出したじいさん付喪神が、ブツブツ文句を言っている。
「はいはい。すみませんね。」
悠真は気の無い様子でそう言う。
手元では、急須にお茶の葉を入れ、お茶を淹れる準備をしている。
「誰が神様やねん。付喪神はどっちかゆーたら妖怪やで。」
茶碗の言葉を聞いたコマが呆れたように言った。
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