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悠真は、書斎に備え付けのポットから熱いお湯を急須に注ぐと、蓋をして茶葉が開くのを待つ。
「でも、神様やってるやつもいるんじゃないか?」
睨み合うコマと茶碗に言う。
「そうじゃな。そういう奴もおるかもしれんな。」
お茶の匂いにつられて、茶碗がフラフラと急須に寄ってくる。
「この国の神さんはようさんおるからなぁ。ほんでも、ボクも茶碗も違うけどな。」
コマは悠真の言葉を少し考えるが、茶碗はもう聞いていない。
悠真はしばらくして、茶碗の本体に、熱い煎茶を淹れてやった。
「はぁー、いい香りじゃ。いい香りじゃが、嘆かわしいのう。」
茶碗はデレデレした顔をしている。
「また始まった。」
コマは、いつも繰り返される次の言葉を察して、げんなりと悠真の足元に寝そべった。
「嘆かわしい。このワシが、急須で茶を注がれるなんて。正之助なら茶をたててくれるのに。」
そう言うと、おいおいと泣くフリをする。
「いい加減諦めなよ。抹茶のたて方は教えて貰ってないんだ。」
悠真は座り心地の良い椅子に体を沈め、新品の白いポットが悪目立ちする、古い書斎を眺めた。
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