つくも

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ここは元々、悠真の祖父の正之助の書斎だ。 悠真がいる書斎机から見て右側の壁は、1面が古い書物で埋め尽くされている本棚。 正面には小さな応接セット。 その向こう側には、さっき茶碗を仕舞って放置していたローチェスト。 書斎机から見て部屋の左側は、桐の箱やらブリキの箱やら、なんだか分からない壺やらなんやらが、崩れない程度に上手く積まれている。 窓は書斎机の背面に大きなものが1つ。 さほど広くないこの年老いた書斎では、日中はこの窓1つで充分明るい。 祖父が先週他界してからは、悠真だけが入ることの出来る部屋だ。 正之助は変わった品物が好きだった。 当人も少し変わった人物で、悠真は幼い頃、おじいちゃんは魔法使いだと思っていた時期がある。 その代表がこの書斎。 カラクリは今のところ分からないが、生前の祖父と、悠真しか入ることが出来ない。 コマが言うには、対人間用の結界のような仕様になっているらしい。 遺産目当ての遠い親戚なども葬儀の時には来ていたが、入らずの部屋がある邸など気味が悪いと、焼香だけ済ませるとさっさと帰っていった。 祖父と悠真が仲が良かったことを知っている父は、悠真のためにその気味が悪い呼ばわりされた邸を引き取った。 おかげで、こうして毎日のようにここへやって来ては、祖父の遺したもの達と過ごしている。
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