つくも

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とは言っても、ただ遊びに来ているわけでもない。 「コマ、今日の分は?」 茶碗が大人しくなると、悠真はコマに訊く。 コマも心得ていたように、ローチェストの小さな引き出しの中から、朱い布の包みを咥えてきてデスクの上に置いた。 「これは?」 慶事用の朱い袱紗を開きながら、コマに訊く。 「小梅さんから預かったんや。ただ、正之助はその後すぐに体調崩してしもたから、そのままになってしもとる。今朝、散歩がてら小梅さんとこのぞいてきたんやけど、ちょっと急いたほうがええかもしれん。」 幾重にも畳まれた袱紗の中から出てきたのは、折れたつげ櫛だった。 よく手入れはされているが、年季の入ったもののようだ。 「真っ二つだな。」 そこにあるだけで、妙な違和感がある品物だ。 「待て。」 櫛を触ろうとした悠真を、茶碗の声が制止する。 「どうした?茶碗?」 文句を言いながらも、お茶の香りを楽しんでいた茶碗が袱紗の側までやってきた。 「折れ櫛には触らん方がええじゃろ。厄を貰うぞ。」 騒がしかった茶碗が、真面目な顔で言う。 「コマは大丈夫なのか?」 先ほど、この包みを咥えてきたコマを見るが、特に変わった様子はない。 「ボクらはコレと似たようなもんやから。」 コマと茶碗が視線を交わす。 「特に、この家はこやつのテリトリーじゃからな。ただし、人間のお前はやめといた方がええじゃろ。正之助にこれを相談した本人も分かっとるみたいやしな。」 朱い袱紗を指して茶碗が関心したように言った。
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