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「それはお前さんの方がよく分かるしゃろ。ワシらはお互いにさほど興味が無いからな。」
茶碗がお茶の近くへ戻っていく。
茶碗はその茶を飲むことは無い。
ただ本体のあるべき姿、茶を注がれていることに意味がある。
「気配でもあるんか?」
書斎机の上に鼻を向け、コマが匂いを嗅ぐ。
「微かに。」
悠真はコマの頭を撫でながら言う。
「行くか。」
コマのその言葉に、悠真は広げた袱紗で櫛をそっと包み直す。
コマはその間に、自分用の小さな紅い巾着をローチェストの上から引っ張って来た。
悠真はそれを受け取ると巾着の口を開く。
コマは書斎机の上から、袱紗に包まれた櫛を咥えてその中に入れた。
その巾着の長い紐をコマの首に掛けてやる。
そのあいだに、茶碗は懐から和紙と筆を取り出し、何やらツラツラと書き付けている。
「じゃあ、行ってくるから。」
悠真がそう言うと、茶碗は和紙を畳んで悠真に渡す。
「もし、櫛の付喪神を見つけたら、その手順のどれかで戻せるじゃろう。」
「ありがとう。茶碗。」
茶碗は、自分の役目は終わったとばかりに、後ろ手にヒラヒラと手を振った。
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