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「コマ、ちょっとコンビニ寄っていいか?」
祖父の邸の門扉を閉めながら、悠真はコマに訊く。
「かまへんけど、腹でも減ったんか?」
「いや、これ。」
悠真が差し出したのは、キャラメルの包み紙ほどの和紙。
先ほど、茶碗が悠真に寄越したものだ。
その紙にはこう書かれている。
踏む。
清水で洗う。
いづれか。
「ミネラルウォーターでも買って行こうかと思って。」
紙をポケットに仕舞いながら悠真が言う。
「清水か。そんな邪魔くさいことせんと、踏んでみたらええやんか。」
踏む。が最初に書いてあるあたり、茶碗も同じ考えなのだろう。
「さすがに可哀想だろ。」
悠真にしてみれば、折れてしまった櫛の付喪神が、元気だとは思いがたい。
それを踏んづけるのは出来れば避けたい。
「お人好しやな。」
「そんな事ないよ。」
そう言い合いながら、近くのコンビニに向けて歩き出す。
小梅さんの家とは反対方向になるので、少し遠回りすることにはなるが、後から買いに行くより手間は少ないだろう。
祖父の家から1番近いコンビニは、小学校の近くにある。
週末の今日は少年野球の試合でもあったのか、途中、ユニホーム姿の子供たちとすれ違った。
「なー!亀井戸行こうぜー。」
やんちゃそうな野球少年が、よく通る声で話している。
小学校の方へ角を曲がると、少し行ったところに校門がある。
コンビニはそのさらに先、国道を渡ったところにあった。
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