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「ふざけていない!本名だ!」
「あら、ごめんなさいね。」
怒りが沸々と込み上げてきた。
顔も知らない相手にここまで馬鹿にされるのは初めてだ。
「そんなことよりも!この状況を何とかするほうが先だろう!アゲハ、一番新しい記憶はなんだ?」
「新しい記憶?んーとねぇ、仕事終わりに夜道を歩いたわ。」
「それだけか?」
「えぇ。真っ直ぐ家に向かっていたはずだけど、家に着いた記憶はないわ。」
おかしい。
俺もそうだったのだが、襲われたという記憶はないのだ。
まるで記憶と記憶の繋ぎ目をごっそり奪われたようだ。
「どうして、俺とアゲハなんだ?」
この女には見覚えがない。
恐らく会ったことはないはずだ。
共通の知人がいて、恨まれている、とかか?
もっとも恨まれるようなことはしていないつもりだが。
「違うよ、君ら2人だけじゃない。」
「誰かいるの!?」
アゲハとは反対方向から少年のような声が聞こえてきた。
その声は恐ろしく冷静で、淡々としている。
「お前は誰だ?」
「僕のことは、ハヤテって呼んでくれるかな。君らと同じ状況だよ。」
「ハヤテ、いつから意識があったんだ?」
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