0人が本棚に入れています
本棚に追加
1人はタナカと名乗る30代前半くらいのサラリーマン、そしてもう1人はイガラシと名乗る年配の無職男。
「おい、ハヤテ。最後の1人はどんな男なんだ?」
「そーだな。呼吸は少し荒い。少し高い音の呼吸を感じる。あとちょっと脂っぽいかな。まあ要するにデブだね。」
「な、なぜそんなことが分かるんですか?」
タナカはずっと怯えた声で誰に対しても敬語で話していた。
「僕は耳がいいんだ。とっても。それよりそんなに怯えないほうがいいよ。多分もうそろそろ死ぬんだから、残りの時間怯えたままじゃあ不憫でしょ?」
タナカはその言葉で余計怯えた様子でひぃっと声をあげた。
「ちょっとハヤテ、あんた何でそんなに無神経なのよ。きっと大丈夫とか、励ます言葉もあるでしょ!」
「そんな嘘を言うより本当のことを言って残り時間有意義に過ごすほうがよっぽど利口だよ、おねーさん。」
「はっ!いい事言うじゃねーか!全くその通りだぜ。」
「有意義に過ごしようがないだろう。この状況で。」
俺たちの話し合いはどう転がっても状況を打破する為にはならなかった。
ただひたすら時が過ぎるのを待ち、そしてようやく視界を遮る霧が晴れた。
最初のコメントを投稿しよう!