16.彼の優しさ

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「ほんと……変わんねぇな……」 結んだ口元に、彼は微かな笑みを浮かべた。 私を見つめる瞳は、どこか切なく揺れていた。 「…体調は?」 「えっ?…あ、大丈…」 「大丈夫じゃないのに大丈夫とか言うのやめろ。 熱、九度越えだった」 「……九度?」 「昨夜、知り合いの医者を呼んで、すぐに診てもらった。 原因はたぶん過労。 免疫力低下からくる風邪だそうだ」 知り合いの医者って…いつの間にそんな…。 「薬も処方してもらった。 早く飲んでまた寝たほうがいい。 今日は泊まればいいから」
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