16.彼の優しさ

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私はぐっと下唇を噛んだ。 その様子を見て彼は黙り込んでしまった。 彼は髪を荒れたように掻き分け、消えるようなため息をつく。 「……ごめん。 俺は……こういうことが言いたいんじゃなくて…」 「一緒に住んでるなら、悪いから…」 …気づいたら、言葉は口をついて出ていた。 言ったらだめだってわかってるのに。 わかってるのに、止められない。 「……美桜さんに会うのは…まだ、辛いなって…」 「……」 「私、邪魔だから…。 私だったら、彼が何とも思っていない女の子でも、家に泊まらせるのは嫌だもん。 美桜さんだって、嫌な思いするだろうし……ね?」 楢崎くんの目を見ることができなくて、作り笑顔で笑ってみせた。
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