第2章 記憶

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まずは、自分のクラスが一階にあることを思い出す。 いや昨日までは確かに毎日学校に行っていた訳ではあるのだが、 まだ小さかった私には現状把握が難しいのだ。 ただ、血だらけになって痛い足をしきりに擦った。 そして体育館シューズなるものを学校に置いている事に気が付いた。 とはいえ、もはや教室だって機能していない。 全壊ではないものの、半壊している校舎は、自分のクラスがどこだったか分からないくらいの惨状であった。 自分の体育館シューズをと探そうにも見つからない。 とりあえず誰のでもいいから、と母が適当に見繕ってくれた。 違うクラスの誰のかも分からないシューズを履き、もう一度あの校庭に戻った。 たった数分だったと思う。 教室を探し、靴を見つけて戻った。 それだけの時間で、さらなる教団ともいえる人たちが 小学校のそれは小さな校庭に溢れていた。 迷子にならないよう、母の手をしっかり握り 父と祖父母たちの元に戻った。 父は祖父母たちを安心させ、彼らに私を預けて、 両親は、必要な物を取りに戻ると言った。 「・・・・!!」 声なのか、鼻をすすっているのか 何となく両親を引き留めてしまったのを覚えている。 やはり小さな私には、まだ現状を理解できていなかった。 父は私の頭を優しく撫で、母は少し不安な顔を覗かせる私にニッコリ微笑んで 「大丈夫。何かあったかいもの探してくるね」 と私にしっかり毛布を包ませた。
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