第2章 記憶

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今思い出すと、父や母だって不安だったに違いない。 それでも手を振って笑って歩いていく二人を見送るしかなかった。 どれくらい待ったのか、覚えていないが 少しすると、色々な物を手に抱えた両親が戻ってきた。 母と共に団体キャンプに参加した思い出あるマイ寝袋と、 当時愛用にしていたキャラクターの枕。 それから、 ここに来る前に嗅ぎ取った匂いは、やはり炊き立てのご飯の匂いだった。 ご近所さんが朝食に食べるはずであったご飯は、おにぎりとして、小さくラップに 包まれて母の手から差し出された。 小さいカップには少ないながら、湯気が立ち上るミルク。 この寒空の下で、ブルーシートの上で飲むミルクは二度と忘れない格別な味だった。
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