第3章 だいじなもの

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我に返るとそこはいつもの何ら変わりない日常。 目の前には最新のPCにスマートフォン。 それからあったい暖房グッズ。 PCの横には、ホットミルク。 地デジの最新TVからは、「今日は何の日」と震災のエピソードが流れている。 今日は1月17日 あれから私は何年たったのだろう。 あの寒空の下でホットミルクを飲んだあの日は、とうに私の奥底に忘れられた 光景を思い出させていた。 あの時の悲惨な光景はもう過去のものへと変わっていた。 ぺしゃんと潰れた自分の家や見知った街並みの変貌、 何より空腹で、寒くて自分はこんな若い身空で終焉するのかという 子供ながら訳が分からず「なにか」に怯えたあの恐怖は あっという間に忘れていた。 一年で多分一回だけ。
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