第2章 記憶

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寝床にあたる場所から玄関だった場所に移って、 改めて自分の家があった所を見渡してみる。 我が家は複雑な構造をしていた。 家の隣には祖父母の家が建ち、互いに庭で繋がっているのだ。 また互いの家と庭の間に、祖母が経営する学生向け二階建てのアパートが小さくある。 いや、あるはずだった。 祖父母の家は全体的に崩れているものの、まだ「家」としてみることが出来た。 我が家は・・・言うまでもなく、私のタンスや寝床を中心としてそれ以外は皆無だった。玄関と思わしき場所は小さなガラスや瓦礫で埋め尽くされ、四方八方に靴が投げ出されている。玄関扉に至っては、ただ機能を失った扉が向かいの道路を超えて、扉という部品として落ちていた。 アパートは一応建っていた。 築何年だったろうか。 白い外壁がはがれ掛け、 祖父母も高齢だし、いっそと二世帯住宅にしようと話が出たころで、年末から設計図に起こす作業が始まったころであった。アパートもその中に組み込むか、経営をやめるか、そんな頃。 あの大きな地震という魔物に、まっすぐ立ち向かったであろうアパートは、 そうまっすぐ縦に沈んでいた。 二階建てのはずのアパートは一階部分は見当たらず、二階住人のベッドが道路や屋上に投げ出されていた。
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