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「コーヒーコーヒーっと…」
自宅から歩いて移動すること約15分、近所にある比較的規模の大きいスーパーへと到着すると、早速目当てであるインスタントコーヒーが売られているコーナーへと急ぐ。
ここへは中学生の頃から買い物の手伝いなんかでよく来ていたから、だいたいの商品の売られているコーナーの場所は把握している………と、カッコつけたいところだが、ふと少し視線を上げてみればそのコーナーにどんな物があるか分かるカードがぶら下がっているので、それを頼りに探す。
「えーっと……お?」
歩き回ること数分、インスタントコーヒーが売られているコーナーの場所を見つけたので歩いていくと、すでに人が居た。
いや、朝とはいえ別にここに人が居ること自体は珍しいことじゃないんだ。
でも、その人は…………
「ん? ………あぁ、なんだ────“あの時のガキ”じゃねぇか」
俺に気付くなりニヤリと口元に笑みを浮かべ、親しげに話しかけてきたのは────
「え、“エイマ”さん……」
真っ黒な髪を背中辺りで一つに纏めた髪型にラフな服装をした、“昔”とほとんど変わっていない容姿の女性。
「元気してたか? その情けない女みてぇなツラは相変わらずみてーだが…」
「…『その情けない女みてぇなツラ』は余計ですよ」
いや、しっかし……本当に変わっていないな、この人は。
「事実女顔で声も中性的だろぉ? でなきゃ“あの時”女と間違わなかったっての」
俺が買おうとしていた物と同じインスタントコーヒーを手に取り、そんなことを言う。
まぁ、確かに昔からよく女と間違われることはあったけどさ。
「確かにそうですね。 じゃなきゃ泣いていた俺に『おい、その服汚れちまっただろ。 新しい服を買ってやる』なんて言って、服屋で女の子用の服のあるコーナーへ連れて行ったりしませんもんね」
「う……あん時は悪かったって」
俺もいつも買っているインスタントコーヒーを手に取り、その場から歩きだすとエイマさんもバツの悪そうな顔をしつつも後をついてくる。
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