怪物は必ずしも孤独か?

2/15
前へ
/15ページ
次へ
 騒がしい秋の夜、街は怪物で埋め尽くされていた。 「ハッピーハロウィーン!」  外を歩けば挨拶代わりに投げかけられる言葉、それも陽気に言うものだから冷めた目で見ている私にとって実にうっとうしく感じる。  海外文化であるはずなのに表面がテカテカしている河童や、被り物の目玉親父がカボチャを抱いているのはいかがなものか。例外として和服を着た猫娘は許そう。何せ可愛い。  いかがわしい妄想を頭の中で展開させながら街を歩いていると、偶然吸血鬼の仮装をした友人である日登に出会った。  白く塗った顔に安っぽい牙、それに黒いマントをはおったチープな吸血鬼だ。日登は私に気が付くと左手を差し出してお菓子をねだってきた。 「トリックオアトリート!」  大の男が笑顔でお菓子をねだる姿がここまで醜いものだとは思わなかった。久しぶりの再会がこれでは積もる話も全て消える。 「なあ日登、一度家に帰って服を着替えてから話しかけてくれないか」 「今日はハロウィンなんだからむしろ君の方がダサいと思うよ」 「そのハロウィンが嫌いなんだ」 「じゃあなんで君は外にいるのさ?」  確かにそれもそうだ。反論のしようがない。ハロウィンに浮かれて馬鹿騒ぎをする奴らは嫌いだが、祭り自体は嫌いではないのだ。だが特別なことは結局何もなく悪態をついて勝手にいじけている。  だがそれを正直に言う私ではない。日登には「外食したくてな」と適当な嘘を吐いた。すると日登は「独り者同士一緒に行こうじゃないか」と私の返事を聞く事もなく、隣を歩き始めた。  小さな子供お化けの集団が先程の日登のようにあちらこちらでお菓子をねだっている。  悪戯をされたくなければお菓子をよこせ、と言って回るのは脅迫や強盗と何が違うのだろうかとも思う。将来はろくな大人にならないだろう。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加