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店員は、 ぼくとレイコさんの目の前にその小皿を置くと、 続いて白衣のポケットから横長の、 草色をした封を二つ取り出して、 にっこり笑ってみせた。 そして、 大仰に体を傾げて愛想を振りまきながら、 その封を、 駅前で配られている消費者金融のポケットティッシュさながらに、 ぼくとレイコさんに、 へりくだった仕草で差し出した。 そのとき、 ヒンディー語らしい言葉を2つ3つ、 口にしていたようだが、 何を言っていたのかは、 さっぱりわからなかった。 「あすの午後4時45分、 成田発、 オール・インディア・エアウェイズ307便です」。 アマー氏にそう言われて、 封の中をあらためると、 アルファベットと数字が無機質に印字された、 3枚つづりの紙片が入っていた。
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