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駆け落ち? 目を丸くしてのけぞるレイコさんの、
ブルガリのあの輪っかに似たペンダントが、
ニッセンか何かの通販で買ったらしい黒いカットソー越しに、
胸元できらりと光って、
その光にはじかれたようにレイコさんはまた、
哀しげに笑い出す。
ちょっと、
きょうは本当に、
どうしちゃったのよ。
まったく、
何バカなこと言ってるの?
真剣だよ、
と言ってぼくは頬杖をつき、
レイコさんを上目づかいに見る。
「二人で逃げよう」
「逃げるって……」そう言いかけて、
鼻で笑うレイコさんの口調は、
いよいよ苛立ちを隠しきれなくなってくる。
「そんなこと、
できるわけないじゃない。
第一、
あなた仕事どうするの? それに、
逃げるって、
いったいどこへ逃げるっていうのよ」
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