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「奇跡、なんて言葉、オレ大層に言っちゃったけど、ちょっと偶然が重なっただけなのさ。この位の星空なら、山や海で観ることが出来るだろ」
まるで、今にも鈴木君が、浮かんで消えてしまいそうな気がして怖くなった。
「だけどさ、この星々は、遥か彼方に本当に有るわけで、確かめる事も出来ないくせに、認識だけはしている。それ程、途方もなく広い宇宙の中で、ここに君がいる。
それが、奇跡、なのかなって思うよ」
私は、黙って頷いた。
「オレんちさ、親が離婚しちゃって。オレと妹と母さんとで暮らしているんだけど、母さん、夜も働き出してさ、遅くまで帰ってこないんだ。別に心配なんかしてないんだけど、申し訳なく思えて。そしたら、なんか眠れなくなっちゃってさ、天体観測始めたんだ」
「オレ、とても焦がれるんだ。星は、宇宙の入口だから」
星が大好きな、鈴木君。
「私、鈴木君と出会えて良かった。初めて、友達が出来た、なのに…」
誰でも良かった訳じゃない。
きっと、鈴木君だから、声を掛けたんだ。
「友達は無くならない。
別に、あの辺の星に引っ越す訳でも無いんだろ、また遊ぼうよ。地球なんて、本当に小さなものなんだから」
フフッ
スケールでかっ。
「やっぱり、鈴木君は、大物だね」
「それ、誉めてんの?」
「うん、下手すると、大犯罪者だけどね」
真夜中のタワーマンションの屋上で、二人して笑った。
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