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次の日も、鈴木君は教室に入るなり、机に突っ伏して、眠ってしまった。
おはようの挨拶も交わさずに。
放課後になると、彼は、目を開けて、ただ、席に座っていた。帰宅する素振りも無く。
だから私は、また声を掛けた。
「鈴木君、また一緒に帰っていい?」
「うん」
電車の中では、今日もまだ暑いね、とか、でも段々、日が短くなってきたね、とか、当たり障りの無い事を、私が勝手に話していた。
私にしては、無理の無い会話だった。
そんな一緒に帰る日が、3日続いた時。
「あ、あのさ、三橋。オレと一緒に帰るの楽しい?」
驚いた。突然鈴木君が、話し掛けてきたのもそうだったけど、私の名前を知っていた事にもっとビックリした。
「え、うん。別に普通…」
失敗した。もう少し、気の利いた言葉を言えば良かったと思って、俯いた。
その後の話が出てこない。
「なんで、オレに関わるの?」
「え、それは…なんか、話してみたいと思ったから…」
言葉が勝手に口から出てしまう。
でも頭には、なにも浮かばない。
「星を、観ているんだ」
徐に放った、鈴木君の言葉に、戸惑った。
「夜、ずっと星の観察をしているんだ」
鈴木君は星が好きなんだ。すると。
「前に、訊いてきただろ。なんで学校で寝てばっかりなのかって」
確かに訊いた。
それって、もしかして、星の観察で夜更かしして。それで寝不足で居眠りなの?
「本当に?」
「ああ、マジ」
頬と耳を真っ赤にしている彼を見て、私は面白くなってしまった。
「フフッ、星が好きだなんて、ロマンチックだね」
「……」
また、言葉のチョイスを間違えてしまったかな。鈴木君は、ますます顔を赤くして、黙ってしまった。
でも、私の顔は綻んだままだった。
「星を観ていると、全部、忘れられるから」
「えっ」
その後は、また黙ってしまった。
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