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「どこで、星を観てるの?」
やっと見つけた言葉に、鈴木君が微笑んで応えた。
「とっておきの場所があるんだ」
「どこ?」
「フフッ、ないしょ」
てっきり、部屋の窓から望遠鏡で観測でもしているのかと思ったら、違うみたいな素振り。私は、少し食い下がって言った。
「えーっ、教えてよ」
「フフフッ、じゃあ、絶対に内緒にしてくれよ」
「うん」
すると、鈴木君の顔が私の頭に近づいてきたので、ドキッとした。
小さな声と息が、私の耳をくすぐる。
「五反田の、でっかいマンション。知ってる?」
「うん?、え、そこなの?」
「ああ、その屋上」
私は、片手を口に添えて、驚きが漏れないようにした。
「そう、勝手に屋上に立ち入る訳だから、くれぐれも内緒だよ」
それって、不法侵入とか言うんじゃ…。
鈴木君の意外な一面だった。でも、学校での態度も、ある意味大胆ではあるが。なにしろ私は驚いて、また言葉を失ってしまった。
「三橋、もし、よければ、招待するよ」
「え」
鈴木君は真っ直ぐ、私を見つめている。
「君に、星を見せたい」
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