奇跡観測

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星を観に来ないか。 今度の木曜日、オリオン座の流星群が観られるかもしれない。 私はそれを承諾した。 そして。 「鈴木君、聞いて欲しい事があるの」 「なに?」 「私、転校するんだ」 お父さんにまた転勤を聞かされた次の日に、鈴木君に初めて声を掛けた。 多い年で、二回もする転校に、もう慣れていると思っていたのに。 心が締めつけられる程、痛い。 昔、味わった事のある傷みを思い出した。 この痛みは、どこから来るのだろう。 やっぱり人と仲良くなるものでは無いな。 鈴木君に話し掛けなければ良かったかな。 「あ、あれ?」 不思議だった。私の両目が、勝手に涙を流し始めた。 ポロポロポロポロ、とめどなく零れ落ちる涙を両手で受け、自分が泣いている事に、やっと気づくと、悲しみに、心が崩れそうになった。 それを、鈴木君が支えてくれた。 黙ったまま、私の肩を掴んで。 鈴木君を思うと、涙が止まらなくなった。 優しくされても、同じ。 悲しいの。 だけど、それを後悔だなんて、思いたくなかった。 土曜日、日曜日とも学校はお休みで、鈴木君に会えなくて寂しくて、悲しかった。 でも、月曜日、鈴木君と、お話をしていても、楽しいのか、悲しいのか分からなかった。 星を観に行く約束も、とても楽しみに思えば思うほど。 胸が痛くなり。涙が零れ落ちた。 火曜日、珍しく鈴木君が朝から口をきいてくれた。 「まずい事になった」 「なに?」 「木曜日に、台風が関東に来るらしい」 私は土曜日に東京を立つ予定だった。
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