第12話 ノンフィクション率98%

4/5
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
 夜に響く激しい噴射音と白く見える噴霧液を方向を見極めて放つ。思惑通り、『やつ』は端に少し飛ばされぎみに逃亡を謀るがそれは想定内。  我ながらしつこい程の対処の後、『やつ』は昇天した。  勝利だ。  ホッとした。  それにしても、こんな時はつくづくと思う。  ここまで憐憫の情がわかない相手は他にない。  蚊をバシッと叩き潰した時でさえ、あまり心がこもらないなりにも 『すまんな。献血してやるわけにはいかんのよ』 と思うのだ。  まるで生物種としての嫌悪でも刷り込まれているような気がしてならない。  まさか太古の昔、今よりもはるかに小さい生物であった私達の先祖『脊椎原生動物』は、もしかして、今よりもはるかに巨大であったと言われるこいつらの先祖に補食される対象だったりしたのだろうか?  10センチほどの『やつ』に食まれる3センチほどのミニミニな脊椎を得た魚類の姿を思うと、あってもおかしくはない。  うん、『むかっ』  殺生に対する欠片の戸惑いはあるが、しかし勿論、病害虫とされる『やつ』らには、蚊以上に容赦など感じず、私にとっての必須アイテムは予備を設置するのが常套。  凍らせて倒す殺虫スプレーは素晴らしい発明だと、本当に思う。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!