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 道の先にヒロアキさんが立っていた。  息を切らしながらも、ヒロアキさんの姿を見つけて安堵した。しかし、どうもヒロアキさんの様子がおかしい。 「ヒロアキさん」  声をかけても反応がない。すぐそばまで近づいても、私の存在に気付いていないようだ。  ヒロアキさんの視線の先にはお墓があった。たぶん、いやきっと、千尋さんのお墓だ。そう理解したとき、私の中になにか黒いもやっとしたものがあった。 「ヒロ……」  肩にふれようとした瞬間、ヒロアキさんはぼそっと呟いた。  私は見てはいけないものを見たのかもしれない。聞いてはいけないことを聞いたのかもしれない。私はいったい、何をしているのだろうか。何をしていたのだろうか。 「チヒロ?」  ヒロアキさんの肩に自分のコートをかけて、彼はようやく私の存在に気付いた。 「風邪をひきます。家に戻りましょう」  ヒロアキさんの隣を、下をむいて歩いた。とてもヒロアキさんの顔を見られなかった。石を丸飲みにしたような、歯車にヘドロがこびりついたような、不可解な感覚があった。  千尋……。  そう呟いたヒロアキさんの言葉が頭から離れなかった。
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