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いつからだろう。
ヒロアキさんと食べる料理がおいしいと感じるようになったのは。
いつからだろう。
目にうつる景色が単なるデータではなくなったのは。
ヒロアキさんは風邪をひいて寝込んでしまった。2時間も寒空の下にいたのだから、仕方のないことだ。
「味がしない」
看病のために作ったおかゆ。味付けはいつも通りのはずなのに、舌が正常にはたらいていないみたい。
ふと見た窓の外の景色は美しい白銀の世界ではなく、死んだような灰色の世界。
私は間違っていたのかもしれない。
人間になりたかった。千尋さんになりたかった。千尋さんの真似をすれば、私は千尋さんになれると思っていた。千尋さんの代わりにヒロアキさんの傍にいられると思っていた。
しかし、それは大きな間違いだった。誰かが誰かの代わりになれるはずもなく、機械が人間になんてなれるわけがない。
いつからだろう。ヒロアキさんが私を見るとき、さみしそうな眼をするようになったのは。
私はどうしようもないくらいに、機械でしかなかったのだ。
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