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目を開けると、そこには様々な機械がおかれていて、自分がアルミ製のベッドに横になっていることに気付いた。薄暗い部屋で、いくつかの機械は赤いランプが発光していて、動作音が聞こえた。
「おはよう、起きられるか」
上半身を起こして音源を確認。白髪の老人だった。
「システムは正常に作動しています。おはようございます。私の名前を登録してください」
「チヒロだ」
「認識しました。チヒロダ。私はチヒロダです」
老人は少し頭を抱えてから口を開いた。
「ルート権限。認識名の変更。新規。チヒロ」
「認識しました。チヒロ。それが私の名前ですね」
「そうだ。僕はヒロアキ。君を作ったのは僕の生活の補助と、僕の最期を看取ってもらうためだ」
最期を看取るという意味が理解できなかったために、データベースにアクセスして用語を追加した。どうやら、心臓の停止を確認することらしい。
「作業内容を認識しました。ヒロアキ。まずは何をすればいいでしょうか」
ヒロアキは困ったように鼻の頭をかいた。
「ヒロアキさんと呼んでくれ」
「敬称を認識しました。ヒロアキさん」
ヒロアキさんは「これからよろしく」と優しく微笑んで私の手に触れた。その温度は28度だった。それが私には温かいのか冷たいのかは判断できず、どこまでも28度だった。
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