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 薄暗い部屋を出ると、階段が続いていて外に出ることができた。  どうやら、地下室だったらしい。外観は車一台が入る車庫程度の大きさで、白い正六面体だった。地下施設のための入口なのだろう。私が作られた地下のほうが広かった。  半径30メートルほどの開けた場所に正六面体があり、その周辺は葉が赤く色づいた広葉樹で囲まれていた。樹々をかきわけるように伸びた一本の砂利道をヒロアキさんについて歩いた。 「そうか。もう秋になっていたのだな」  ヒロアキさんは紅葉した枝葉を眺めながら美しいとつぶやいたが、私にとってそれはRBG値のデータでしかなく、明度も彩度も高くはないという認識しかなかった。  5分ほど歩いたところで道は十字に分かれていた。左は森を抜けて街に続いていて、右に家があると説明された。直進した道に対する説明はなく、私には必要のない情報だと判断した。  ヒロアキさんが家と呼ぶそれは木造のコテージのような建物で、広い庭があった。ある部分から砂利道はレンガを敷き詰めた道に変わっており、玄関へと向かっていた。  この区域が私に与えられた役目を遂行する場所だと認識した。
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