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「チヒロ、紅茶をいれてくれないか」
ヒロアキさんは中に入るなり椅子に深くもたれた。
「必要素材の位置がわかりません」
「そうだったね」
声を漏らしながら椅子から立ち上がると、私に調理器具や食器の位置や名称、使い方などを丁寧に説明した。
教えられたとおりに紅茶をいれ、一人分の紅茶をテーブルの上においた。ヒロアキさんはそれを飲み、わずかに目を細めた。
「チヒロも飲んだらどうだ」
「必要ありません」
「食べ物や飲み物が動力にならないことはわかっている。でも、食べたり飲んだりすることはできるようにしてある。僕と同じものをチヒロにも口にしてほしい。これからはすべて二人分作ってくれ」
「わかりました」
私は言われたとおり自分の紅茶をいれて飲んだ。
紅茶を口にして初めて、自分の鼻や舌にも感覚機能が備わっていることに気付いた。それらのにおいや味を認識できても、ヒロアキさんと同じ感覚になるわけではないため、感覚機能を付ける理由がわからなかった。
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