第1章

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相手モンスターの主は私と同じぐらいの少年だった。 世間でなら王子と言われるような金髪の美少年というところか…私みたいな平凡な女には釣り合わんな。 わりと優男だが、佇まいに隙がない。 たとえば、私が近づく前にこちらを向くあたり。 常に周りの状況に気を配ってないと出来ない。 王子系なのに女の子を侍らせてないのも気になる。 話が分からない性格だと、ちょっと厄介だぞ。 「こんにちは…うちの子と一緒にいるモンスターは…あなたのモンスター?」 第一印象は大切にせねばと友好的に話しかける。 「そうだよ。」 優男まんまの、涼やかな声が返ってきた。 第一関門は突破…初対面の人間に返事はしてくれた。 「あなたのモンスター…私のモンスターと仲が良さそうね。」 どう転ぶか、私が背負うとなると気が重い。 だが、引かずにはいられなかった。 「良かったら、少し二人で遊ばせてみない?」 まるで、恋愛の駆け引きを楽しむ野次馬だ。 本来モンスターとは野生の種族だが、人間が関わると単なる自然の営みも物語に変わる。 人間とは、物語を楽しむ生き物であるらしい。 「いいよ。」 あっさり快諾。 何だ、この人の良さは。 私は拍子抜けしてしまった。 見た目は王子、内面も理想的。 言葉少なだが、確実に女子がほっとかないタイプの少年。 なのに、周りに女子がいない。 こいつは腹が黒いのか? それとも身の上が悪いのか? 余計な詮索をしてしまう。 これはモンスターのため? それとも…私のため? どちらか分からないまま、私は見知らぬ少年を警戒する。 どうも荒っぽい生き方をしてると、変に勘ぐって困るな。 女は恋に慎重な場合があるけど…だから女だてらにとか、男が寄りつかんなとか言われるんだろうな。 女に戦う生きざまはあまり向かない。 だのに、それを選んでしまった…単なる好奇心か相棒を守る母性からか。 きっと、どちらでもあるのだろう。
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