第1章

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いやいや、単純に彼女がいて会ったことがないだけかもしれないな。 余計な思考を巡らせ続けてしばらく。 モンスターたちは仲良く遊んでいるし、仲も良好。 相手のモンスターの主もボーッとしながら二匹が遊ぶ姿を静かに見守るだけ。 てか、会話が出ない? そもそも、私は彼の名前さえ聞いてない。 いや…どうやったら話を切り出せる? 変な人だとか思われたくないし…でも、名前を聞くだけだろ? そこまで考えて、どこか自分がおかしいことに気づく。 私、無意識に相手を意識してるんじゃ…? いや…それはあり得ないでしょ…初対面だよ? 一目惚れというやつ? いや…どこにそんな要素があったの? 自分のモンスター使って白馬の王子様とお近づきになりたいとか…そんな不謹慎な女子じゃないと私は信じている…信じているのだが。 今しがた、その自信はもろくも崩れ去った。 相棒がいるとはいえ、女の一人と一匹の旅。 かなり危険なこともあったし…いつも気を張りつめていたから穏やかな時間は久方ぶりというのかな。 ああ、もう…私の方が先に参ってどうする! モンスターは主に似るという話だが、好きになる相手のタイプも似てくるのだろうか? それはある意味、楽でいいかもしれないけど。 でも、モンスターと違って人間には手順とか恥じらいという面倒なものが。 私はそしらぬふりして内心ひたすら思案顔してる姿など、名前も知らない相手は考えもしないだろう。 てか、私ってこんなに惚れっぽい女だった? 相棒のためと身体を張るつもりのとき、そもそも私は相手に何をしようとしていた? 嫌なのにひたすら甘ったるい感情が頭の中を占めていく。 「ミャー!」 あんたにも、春が来たわね。 そう言わんばかりにやれやれだなと、私のモンスターが私の方を向いて一声鳴いた。
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