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手を伸ばすと優しく微笑んでくれる。
少し目尻の下がった、私の大好きな笑顔。
「ずっと一緒だよ」
「……うん」
柔らかいテノールが響いて、涙が目尻から落ちていく。
「たく……」
「愛菜」
琢哉はもう平気なの?
そう聞こうとしたら、母に名前を呼ばれた。
目を開けるとそこに琢哉の姿はない。
……あれ?
私、夢でも見てたのかな。
でも、目尻から枕へ、涙の流れた跡。
わずかに濡れる、髪の毛。
耳には確かに、琢哉の声が残ってる。
「母さん。
琢哉はどこの病室に入院してるの?
それとも私と違って軽症で、もう退院してるの?」
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