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「レ、レグル嬢! 騎士に私を守るよう命じてくれ! このままでは殺される!」
ルドルフに見放された領主は藁をも掴む必死さで御令嬢に助けを求める。
失礼な奴だ。殺すわけがないだろ。おっかないことを言うな。従順になる程度に痛めつけるだけだぞ。
「…………」
領主から救いを求められた御令嬢は瞑想するように目を閉じたまま微動だにしない。
ゴリラな隊長も女騎士も仕える主からの命令がないため動く気配はなかった。
どういうつもりか知らないが俺の邪魔をする気はないらしい。彼女たちとも、ルドルフとは違う意味で戦いたくなかったから安心した。
部屋にいる誰も助けに入らないと理解した領主は額に脂汗を滲ませ焦燥する。
「そうだ、落ち着こうじゃないか。むむっ、わかったぞ! ひょっとしたら君もエルフの奴隷が欲しいのかね? しかしだ、奴隷というのは奪い取るのではなく財産と地位を得て自らの力で手に入れるべきものであってだね――」
領主が何やら偉そうに語っている。不愉快極まりないな。無理やり奴隷にしたエルフを買ったくせに厚顔な男め。
「この俺がエルフの奴隷を欲しがってるとは笑えない冗談を言うやつだな」
俺はフードを脱いで傲慢な領主に素顔を――尖った耳を――晒した。
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