領主と奴隷

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「……さあ、領主様。洗いざらい吐いてもらいましょうか。あなたの知っていることをすべて!」  御令嬢がビシィと指をさして領主に自白を促す。ええ……もっとこう、手練手管に絡めとる感じで追い詰めていくべきじゃないのか。せっかく焦ってるんだから。 「わ、私は知らん! 何も知らんぞ! 私はただ奴隷を流れの商人から買っただけだ!」  ほら。やっぱり、見苦しく抵抗を継続し始めたぞ。御令嬢は予想外の抵抗のように目を丸くしていた。 「お、多くのエルフ奴隷がこの町を経由して各地へ出回っているのは確認しているのです! 知らぬ存ぜぬは通りませんよ!」 「ハッ、この町からエルフの奴隷が? ありもしない言いがかりをつけるのはやめて頂きたいものですな!」 「とぼけないでください! こうやって現に奴隷を囲っているあなたが関知していないだなんて白々しいにもほどがありますよ!」 「私は連中がどういうやつらかなんて知らなかったんだ! よい商人を見つけたから紹介しようとしただけなのに、とんだ侮辱だ!」 「ぐぬぬ……この期に及んで言い逃れをするなんて!」  睨み合う領主と御令嬢。これでは先ほどと組み合わせが変わっただけである。  ……失礼だが彼女には少々、駆け引きのスキルが足りていないのではないか。裏表のない狡猾さの欠片もない人間性には好感が持てるけれど。  満を持して目論みを明かしたのに御令嬢の立ち回りが下手すぎて完全に機を逃した感じだった。  どう収集をつけるんだ、これ……。
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