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「まあまあ、ちょっと落ち着こうぜ。お二人さんよ」
泥沼になりつつあった状況にルドルフが割り込んだ。何をするつもりだ。こいつのやらかすことがまともなことだとは思えない。
「このまま知った知らないで水掛け論を交わしていても埒が明かないだろ。一向に話が進む気配が見えねえ。オレはそんなつまらない引き延ばし展開が嫌いなんだ」
「お前の好き嫌いはどうでもいいんだが……」
俺のジト目をスルーしてルドルフは続ける。
「だから知っているやつにゲロってもらおうぜ。そこのエルフの奴隷ならいろいろと知ってるんじゃねえか?」
「……ジンジャーには制限がかかっている。首輪の術式を変えない限り何も話すことはできんよ」
領主はつまらない提案だと吐き捨てた。俺もそう思う。そもそも、その首輪を外すか外さないかで揉めているのに。
「なら外せばいいだろ」
「「「「「!?」」」」」
俺含め、部屋にいた誰もがルドルフの発言に目を剥く。
「ル、ルドルフ君! 君が言ったんじゃないか、奴隷商の首輪は奴隷商にしか外せないと。それとも君には外せるというのか!?」
「いいや、オレには無理だ。オレは魔道具には詳しくねえし。それは王立魔道学園に引きこもっている『才媛』の領分だ」
ルドルフは俺の知らない誰かの二つ名を口走り、否定した。
「……君にも解除できないものを誰がするというのだね? それとも君の伝手であの『才媛』に渡りをつけてくれるのかな?」
「あんな根暗を呼ぶまでもねえよ。最初に言っただろ。こいつも魔術が使えるってな」
ルドルフがそう言って指さしたのは俺だった。おい、マジかよ。
「まあ、グレン様はそんなこともできるのですか?」
「ふっ、任せておきな!」
答えたのは俺ではない。ルドルフである。ふざけんな。
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