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二つ年上のお姉さんエルフが代わりに付き合ってくれなかったら俺はストレスで発狂していただろう。
そのお姉さんも二年前に旅立ってから一向に里へ帰ってこないので俺は大変フラストレーションが溜まっていた。
ああ、早く森を出てツーリングの旅に出たい。
俺は今回の旅をとても楽しみにしていた。掟とか抜きで外の世界に行って整備された道路を走り回りたいと常々思っていたのだ。
エルフの里の周りは獣道ばかりで全力をだせなかったからな。十五歳になるまでは里を出てはいけないという決まりがなければ速攻で飛び出していただろう。
出て行けという決まりがありながら出て行くなという決まりも同時に存在するとか、これを決めた連中は相当に捻くれている。
「ま、まあ、あたしも二か月後には里を出るわけだし? もしも寂しくて一緒に旅をしたいっていうなら考えてもあげなくないけど? その場合はほら、例のごとく一番近くの町で待っていてくれれば会いに行ってあげてもいいわよっ!?」
ちらちらっと俺の反応を窺うように小刻みに視線を寄越しながらところどころ裏返った声でシルフィは言ってくる。
「いや、大丈夫だ。俺は旅をすることには慣れているからな。多分近くの町はすぐ通り過ぎて数日で王都まで行くと思う」
俺はシルフィの煽りを適当にいなして予定している旅程を話した。俺はそんなに寂しがりに見えるのだろうか。
確かに里の中で恋仲だった連中は片割れが誕生日を迎えるまで近くの町で相手を待って、合流後にハネムーン感覚で二人旅を満喫したりもするらしい。
俺の両親もそうやって二人で世界中を何十年も周ってから里に帰ってきたと惚気て何回も自慢していた。
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