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「そんなに気にするならあの時、寂しいから待ってて言えばよかったじゃん」
「そうしたかったけどさ。そんなこと言う女はあいつのタイプじゃないでしょ?」
「ああ……お兄ちゃん、変態だからね」
聞いてわかる通り、グレンが虐げられたり痛めつけられたりすることで快楽を覚える変態だというのは里の共通認識だった。
もちろん里全体での盛大な勘違いなわけだが、それを知るエルフはいない。
「いきなり背中に座ってくれって頼んでくる筋金入りよ」
シルフィ、幼少期のトラウマである。
「カティアさんがいる間はずっと上に乗ってもらって喜んでたもんね……」
グレンは誰かを乗せて走る車の本能に歓喜していただけだが、周囲は別の意味として捉えていた。
「あいつ、元気でやってるかな……」
自分と一緒に旅することなんか頭の片隅にもなくて、きっと一人でどんどん突っ走ってるのだろう……。
グレンは昔から他者の目を気にすることなく、グレン自身がどう思うかで行動する意志の強さがあった。
弓や魔法をまったく練習せず、身体を鍛えてばかりいることで変人扱いされてもまったく意に介さず自分を磨くことに専念していた。
シルフィはほとんど同じ時期に産まれたにも関わらず、小さい頃から大人びた落ち着きと独自の哲学を持っていたグレンに惹かれていた。
年齢にそぐわない精神の成熟は単にトラックとして過ごした前世があるからで、思考回路もそれに引っ張られているだけなのだが、シルフィはそんなことを知らず、そこに未知の魅力を感じていたのだ。
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