831人が本棚に入れています
本棚に追加
「人間の町には男の人を痛めつけることでお金をもらう仕事をしている女の人もいるみたいだし、お兄ちゃんがハマったりしないか心配だよぉ……」
「なにその仕事!?」
ぽつりとスカーレットから飛び出した言葉にシルフィは身を乗り出す。
義妹(予定)の肩を掴んで前後に激しく揺さ振り、話の続きを必死にせがんだ。
「え、えーと確か、ジョウオウサマっていってたかな? 四つん這いになった男の人の上に乗って歩かせたりするんだって」
「そ、それって」
かつてグレンが幼い自分に要求してきたこと、成長してからは二つ年上のカティアに頼み込んでほぼ毎日行なっていたことそのままではないか……。
シルフィは愕然とした。
人間はなんと恐ろしい業の深い生物なのだろう。
そんなことまで仕事として成り立たせているなんて……。
シルフィに人間社会の偏った認識が植え付けられた瞬間である。
「その道の達人が人間界にはいるのね……」
シルフィは心根の優しいエルフだったが、グレンの嗜好がそういうものだと里中に知れ渡った通称『お馬さん事件』から、彼にはあえてキツく当たるようにしていた。
シルフィはそうすることがグレンへの好意の示し方だと思っていたのだ(勘違い)。
最初のコメントを投稿しよう!