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便箋を懐にしまい、溜息を吐く。
軽い息抜きでクエストを受けたらとんでもないものを拾ってしまった。
テックアート家に発見されたって、これ、きっと奴隷商に関係するやつだよな……。
なぜこんなところに無造作に落ちていたんだ? 周りには誰もいないようだし。密書っぽいのに扱いが雑すぎるだろ。
しかし王立魔道学園には奴隷商の協力者がいるのか。
学園には少しだけ興味があったが、こういう形で関わってくるとは。
この手紙は御令嬢に見せるべきだろうな。
「……お兄さん、何が書いてあったの?」
リリンが顔をひょっこり下から覗かせてくる。
「知りたいか?」
「う、うーん。やめとこうかな?」
何かを察したらしく、リリンはあっさり引いた。そうだな。そうしたほうがいい。知らないほうがいいことが世の中にはあるのだ。
「さて、と……」
「ねえ、本当に開けちゃうの?」
リリンは馬車の中身にビビっているようだった。
大丈夫だよ。多分、お前の思っているようなもんは入ってないから。
……その代わり、他の胸糞悪いものは入ってるかもしれんが。
本音を言えば、俺だって見たくない。
だが、確認しないで帰るという選択肢は選べない。
「リリン、ちょっと後ろ向いててくれ」
「うん、わかった」
リリンは素直に後ろを向いた。そして、耳を塞ぎながら
「わたしは何もミテイナイ……わたしは何もキイテナイ……見たのはエルフのお兄さんだけ……だから関係ナイ……」
「…………」
ある意味、清々しい生き様だな。いろんな意味で感心した。
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