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それにしても奴隷商人はどういう意図があって奴隷たちをこんなところに放置したのだろう。
まだ確定したわけではないが、彼女らはニッサンの町の奴隷商から連れ出された非合法の奴隷で間違いないはずだ。
証拠品であり、商品でもある彼女らを監視もつけずほったらかしとは。
証拠隠滅のために捨てて行ったにしてもお粗末すぎる。
確かに自由に動けなかった奴隷たちはかなり衰弱していた。あと一日、発見が遅れていたら危なかったかもしれない。
だが、確実に処分しなければ意味がない。現にこうやって俺が見つけてしまった。これまで実在する痕跡を一切残さずにやってきた連中にしては杜撰すぎるやり方だ。考えられるのは何か想定外のアクシデントが起こり、それどころではなかったということだが……。
「おにーさん、何か考えごとしてるの?」
頭を整理するのにちょうどいいタイミングでリリンが話しかけてきた。
こいつとのコミュニケーションもだいぶスムーズになってきた。
最初の出会いからは考えられない進歩だ。
「いや、この馬車の持ち主は積み荷を置いてどこへ行ったのかって思ってさ」
「ひょっとして、キメラに襲われたとか?」
「キメラって今探してるやつか? なぜそう思うんだ?」
「だってキメラって罪を犯した人間の肉を好んで食べる習性があるっていうじゃん? あくまで噂だけど」
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