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森の出口、街道にでそうなところまであと少し。
結局、キメラについては何も掴めなかったな。
鳴き声が聞こえた場所を伝えるだけでも一応報酬はもらえるらしいが……。
そんなんでいいのか? まあ、ギルドへの対応はリリンに任せるとしよう。
「おや……?」
ふと、俺は森の空気が変わったことに気が付き立ち止まった。
エルフ特有の森に対する嗅覚っていうのかな。
他の連中よりは鈍いが、俺にもそういう直感のようなものが備わっているのだ。
――ガサガサ
――メキメキ
『ギィギィ……!!』
『ガァガァ……!!』
森の奥から木々が揺れたり折れたりする音が響く。
次いで、魔物の逃げ惑う声があちこちから聞こえた。
森が不穏な空気を発している。
経験上、こういうときは森のヌシが行動を起こしている場合が多い。
「なに!? キメラがきたの!?」
「…………」
俺は立ち止まって音のする方角を眺めた。
喧噪が徐々にこちらへ近づいているような……?
まさか、キメラとご対面か?
しっかり準備しないと倒せないらしい化け物を二人で相手にしないといけないのか?
俺はごくりと唾を嚥下する。
――がさがさっ
そして、茂みから森道に小さな影がひとつ飛び出してくる。
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