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「ひいっ!?」
リリンが小さな悲鳴を上げて俺に背後から抱き着いてきた。
この野郎、俺を盾にするつもりか!
「むっ……?」
出てきた影の正体を見て、俺は首を傾げる。
「んにっく……」
茂みを掻きわけて森の中からでてきたのはエメラルド色の髪をした幼女だった。
「うー」
頭についた葉っぱを邪魔そうに払っている。
なんだ、ただの幼女か……。
「…………」
幼女が猛禽類に似た個性的な黄色い瞳でこちらを見つめてくる。
どうにも既視感がある目の形だな……。
俺は過去の記憶を探ってみる。
真っ白い簡素なワンピース。肩のあたりで揃えられたミディアムヘアの子供……。
やがて、頭の片隅で埃をかぶっていた記憶の断片がゆっくり引き出されてきた。
『カエルの肉だけどいいのかい?』
『ヤッ!』
ニッサンの町を訪れて最初に行なったやり取りが思い返される。
そうだ、彼女は――
「おお、肉の幼女じゃないか!」
カエル肉の燻製を分けようとしたら拒否されてしまった幼女……肉の幼女だ!
あのときは容姿に注目をしていなかったので思い出すのに時間がかかってしまった。
肉の幼女に再会できたのならば、あれをしよう。
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