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ゆっくり馬車を引いて町を歩いていると、周囲の視線は俺たちに集まっていた。
「ねえ、お兄さん。なんかさっきから周りの人がこっちをちらちら見てるような気がするんだけど……」
リリンは俺の行動に慣れ始めてきてるから今の状況に違和感を抱いていないんだろうな。
ただ、町の住人たちはビギナーさんなわけですよ。
だから、
『まあ、なんて惨い……』
『非力なエルフにあんな大きな馬車を引かせて……』
『奴隷かしら? あの女の子、酷い扱いをするわね……』
「!?」
囁かれる声を聞き、リリンはようやく自分がどう見られているかに気付いたらしい。
「あ、あたし先に冒険者ギルドに行ってるから!」
テンパったリリンは居たたまれなくなって御者台から飛び降り、足早に退散していった。
なんか濡れ衣を着せちゃったみたいで申し訳ない。
まあ、こうなるのは予想できてて黙ってたんだけど。
「また後でな!」
俺の声はリリンの背中に届いたのか、否か。
あ、報酬はちゃんと受け取りに行くぞ。ネコババは許さん。
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