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ニッサンの町を出て、俺は時速百キロで街道を爆走していた。
背中には新しく旅のお供に加わった幼女を乗せている。
そう、俺は走っている。人を乗せ、山道ではなく、平らな道路を全力で走っているのだ!
誰かを乗せている重量感と体に纏わりつく風圧は俺に生きている実感を与えてくれる。
「最高の気分だ……」
リリンと近場の森に行ったりもしたが、長距離走行となるとまた気分が違ってくるものだ。
「どうだ? 心が晴れ晴れするだろう?」
「うえーきぼちわるいよー」
「…………」
乗客は同じ気持ちではないようだった。
今世の俺の乗り心地はあまりよくないのだろうか?
だとしたら軽くショックだ。
一つ村を通過し、二つ村を通過し、三つ目の村を通過してしばらくした地点。
対向車の心配もなく、スピード制限もない平和な道。
「くーすぴーくーすぴー」
「…………」
なんだかんだ言いながら、リュキアは俺の背中で心地よさそうに寝ていた。途中休憩で一度、酸っぱいスプラッシュをしたのがよかったのかな。
最初に酔っていたのは振動に慣れていなかっただけなのかもしれない。
そうなら嬉しいんだけど。
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