盗賊と二号さん

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「お嬢、本当にやるんですかい? こんなのは領地を治める貴族か冒険者に任せることですよ」  確定事項のように語ったメイドと違い、騎士のジェロムは乗り気ではなさそうだった。  この男は比較的まともな思考をしていそうだ。  よかった、やっぱり普通のことじゃなかったんだ。  だが、エルーシャが言う、 「やるに決まってるじゃん! 盗賊がいなくならないとフォンダー村の名産品、フリードフォックスの串焼きがいつまでも食べられないんだよ!」  ……串焼き? 「そう、君たちも方向的に通って来たでしょ? 美味しい串焼きで有名なフォンダー村!」  エルーシャが力説してくるが、全然知らん。  フォンダー村ってのは素通りしてきた村のどれかかね。 「せっかく王都からここまで来たのに、盗賊がうろうろしてるせいで猟師がなかなか狩りに出れなくて品切れだったの! まったく許せないことだよね!」  ぷんぷん、と効果音が聞こえてきそうな怒り方。緊張感が一気にそがれるな……。  しかし彼女は本気で怒りを表しているのだろう。  幼げな容姿と頬を膨らませた所作のせいで児戯めいて見えるが、やろうとしていることは結構エグイ。  聞けばエルーシャたちは盗賊をおびき寄せるため、わざと護衛の数を減らして街道をうろついていたらしい。  まんまと引っかかって撃退された盗賊どもは運が悪いというか、因果応報というか。  そこまでして串焼きを食べたいのか? 飽くなき食への執着心である。  エルーシャ嬢にとって、食以外のことは二の次にされるようだ。  一体、何が彼女を駆り立てるのだろう……。 「美味しいものを美味しく頂き、幸せそうに食べる。それがわたしのライフウェイ……」  意味がわからなかった。  だけど彼女のなかでは大事なことなのだろう。  神妙な顔で語ってるし。  俺は同調したフリをして静かに頷いておいた。俺だってこれくらいの空気は読める
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